Tubakka’s blog

初老オヤジの青春時代の実話体験談。毎話読み切り。暇で暇でしょうがない時にお勧め。

(第15話)伝説のナンパ師?蒲田の丸井で踊り食い

大田区蒲田の丸井前

この話は全話の続きだ。詳細はこちら

tubakka.hateblo.jp

 

簡単に経緯だけいうと私の用心棒役をかって出てくれたY崎先輩の指示でナンパをさせられることになったという話の続きだ

(※前話でもバイトの増員に失敗したが、その後女子大生が張り紙をみてバイトに応募してくる。その話はまたいつか…)

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

次の土曜日。バイト終了時刻の20時になると店じまいを早めに切り上げた。この時点で20時半。

私「蒲田の丸井前ってナンパできるもんなんスか?」
Y崎先輩「その辺は俺のダチに訊いてくれ。ナンパ師だから」
私「ナンパ師?」

Y崎先輩のハコスカで蒲田の西口入ると先輩のダチはすでに待機していた。ローレルのシャコ短、オーバーフェンダーに車内にはロールバーが張ってあった。やっぱり類友だなと思った

Y崎先輩のダチは永ちゃんのふりをしたリーゼントの男と倍返しドラマの近藤役、滝藤賢一のようなパーマ頭の男だった。こちらを滝藤と呼ぶことにする

二人がこちらに来た

滝藤「じゃ、俺行ってくっけど。一緒にやるのそっちの子?」
Y崎先輩「おぅ、バイトの後輩だからよろしく」
私「よろしくお願いします」

Y崎先輩が私の顔を見た

Y崎先輩「早く行って来いよ」
私「え?」
Y崎先輩「師匠に教わって来いよ、ナンパ!」

そう言うとハコスカから追い出されてしまった。私は滝藤さんに訊いた

私「ナンパとかしたことなくてコツとかあるんスか?」
滝藤「コツはな、100回声掛けやること」
私「100回も?」
滝藤「そうだ。あとはな、声かけても眼そらして足早に逃げる子は即ヤメ、無駄だから」
私「はぁー」
滝藤「それから声かけて失敗したら30秒待つこと」
私「なんで待つんスか?」
滝藤「30秒経つと人が入れ替わる。そうしないと俺らがあっちこっち声掛けてる姿みられてっから逃げられる」
私「なるほどー。他にもあるんスか?」
滝藤「当たって砕けろ」
私「ですねー。とりあえず何て声かければいいんスか?」
滝藤「何でもいいけど今日なら2人連れ探して『海行こう』でいいよ」
私「『海行こう』ですかー」
滝藤「レクチャー終わり、GO!」

しばらく私は滝藤さんのあとをついて回った。声を掛けてもほとんどの場合、無視されるか軽蔑のまなざしを向けられて終わる。私はとてもこんなこと出来ないなーと思った

滝藤「もういいだろ?お前はアッチで」

…と、蒲田駅西口の階段下を指された

私「いやー、厳しいっス、とても自信ないッス」
滝藤「自信ないのがフツーだ、行け!」

シッシッと手を振られてしまった。仕方なく階段下まで歩いていると私を見つめるY崎先輩と眼があった。行け、行けと2人連れの女性を指差した

私は出来ませんとは言えねーなと思った。Y崎先輩は先日、バットを持った3人組のヤツらから私を守ってくれた。今回はそのお礼なのだから『出来ません』とはとても言えなかった

私は思った『ま、いいか。玉砕してもとりあえず頑張ったことは認めてくれるだろ』と開き直ることにした。思い切ってY崎先輩ご指名の2人連れに声を掛けた

 

私「あの、すいません…海…」

 

片方の女性がキッと睨みつけて軽蔑のまなざしで足早に去って行った

私は『心折れるなー、これ…』と思い、そっとY崎先輩を見た。また、次の2人連れを指差している。『うわ勘弁して』と思いつつも『やめられないよなー』と思い直す。これを繰り返すこと、私のチャレンジは50回を超えてたと思う

夜23時過ぎ。私はそろそろ終電が近いからとY崎先輩に腕時計を指差した。Y崎先輩は顔の前で手を横に振り『関係ねぇぜ』と合図した。『うわぁーエンドレスじゃーん』と思いつつ私は西口商店街から歩いてくるOL風の2人連れを見つけた。『とりあえず行っとくか』くらいの気持ちで声を掛けた

私「あの、すいません、海行きません?」
女性A「海?この時間に?電車ないじゃん」
私「いや車なんですよ、ほらあれ」

私はハコスカを指差した

女性B「えー?あれってさ暴走族がのってるヤツじゃないの?」
女性A「あー、たまにTVでやってるよね。あぶなっ!」

女性二人は酒をのんだ帰りのようで少し酔っている様子だつた

私「あぶなくないですよ、あれなんちゃって族仕様なんで本物じゃないですよ」
女性B「えー?そうなのー?」
女性A「でも乗ってる人怖そー」

Y崎先輩のことだった

私「あの人もなんちゃって族仕様なんで本物じゃないですよ」
女性B「えー?そうなのー?」
女性A「でもいいよー、海行ってもやることないし。帰ろ」
私「海だけじゃないですよ、一緒に訊きましょうよ」

私はなかば強引にハコスカに連れて行った

私「海だけじゃないって今説明してたんでけど、今日は他にどこ行きます?」

私は海に行くことしか聞いてなかったが、玉砕覚悟でY崎先輩に訊いてみた

Y崎先輩「おー、銭洗弁財天行って金持ちになる予定だぜ!」

知らなかった。そうなの?と思った矢先、彼女たちが食いついてきた

女性A「えー、何?お金持ちになれるのー?」
女性B「銭洗弁財天てなに?」

Y崎先輩が説明した。銭洗弁財天は鎌倉にある由緒正しい神社だよ、ここの湧き水でお金を洗うとお金が増えると言う言い伝えがある金運スポットだよ

 

銭洗弁財天宇賀福神社は、神奈川県鎌倉市佐助にある神社である。境内洞窟にある清水で硬貨などを洗うと増えると伝えられていることから、銭洗弁天の名で知られている。 文治元年、源頼朝への宇賀福神の夢のお告げを元に、宇賀福神を祀り神仏の供養を行なったのが創建の由来という伝説がある。

この説明が彼女たちに刺さった。だが強い疑念は残ったままだ

女性A「でも変なとこ連れてく気でしょー?」
女性B「Hならしないよ」
Y崎先輩「大丈夫だぜー、そんな心配ならホラッ、これ書いとけばいいぜ」

Y崎先輩は免許証を取り出すと紙とボールペンとを一緒に渡した

Y崎先輩「俺らがなんかしたら、警察行っていいぜ。…って言うかそんなことしねーって」

彼女たちは顔を見合わせた。どうやら行く気に傾いたようだ

女性A「ほんとに書くよ?いいの?」
Y崎先輩「もち、いいぜ」

女性Aは紙になにやら書き写すと免許証を返した

Y崎先輩「俺、Y崎。こいつバイト先の後輩の高校生」
私「よろしくです」
女性A「ヨーコです」
女性B「チエです」

正直、ヨーコさんは覚えているがチエさんのほうはチエだったか、ミエだったか良く覚えていない。とりあえずチエとしておく。姓はもともと聞いていないから知らない。

私の初めてのナンパは成功し、私は感激した。逆に滝藤さんのほうが苦戦していたが、それから30分ほどして話はまとまったようだった。すでにテッペン(0時)を過ぎたころだったかと思う

かくして2台の車は最初の目的地、銭洗弁財天を目指してスタートした

ヨーコ「なんかドタドタしない?この車」
私「すいません、サスペンションって言う車の部品で硬いのを入れてて乗り心地が今ひとつなんですよね」
チエ「おもしろいけど、お腹に響くねー」
Y崎先輩「俺的に硬派な車なんだぜ」

みんな意味が分からなかった

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

秋口の夜中なのに鎌倉までの16号は混んでいた。銭洗弁財天についたのは夜中の2時を回っていたはずだ

Y崎先輩「ついたぜ」

静寂の闇に包まれた銭洗弁財天はひんやりとした空気が厳かな雰囲気があった

総勢8人連れの真夜中の訪問者は、それぞれ財布を取り出してお金を用意した。私が小銭を用意するとY崎先輩が言った

Y崎先輩「小銭じゃ儲かる金も小銭だぜ」
私「え?そうなんですか?」

見るとみんなお札に切り替えていたのが可笑しかった

私たちは次の目的地の湘南の海に向かった

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ヨーコ「トイレ行きたい」

私たちは近くのコンビニの駐車場に車を止めた。後部座席を開けてヨーコが出ようとした時…。

 

チエ「ヨーコ待って!」

 

私とY崎先輩は振り向いた。見るとヨーコさんの白いスカートのお尻あたりが真っ赤に染まっていた

ヨーコ「あぁっ、やだっ」

Y崎先輩は私に車から出ろと言ってトランクを開けた。赤いジャージを取り出すと急いで自分のジーンズを脱いで穿きかえた

Y崎先輩「俺の汚いけど我慢しろよ、これしかねーぜ。車ん中で着替えてスカートはこれに入れとくといーぜ」

自分のジーンズとトランクにあったトートバッグにビニール袋を入れてヨーコさんに渡した

ヨーコ「…ありがとう」

ヨーコさんは突然女の子の日がきたようだった。それにしても着替えなんか当然持っていない状況ですごい機転だなと思った

着替え中のハコスカはフロントガラス以外は黒いスモークガラスになっていて中が見えない。私たちはリヤのほうに移動して暫し待った

私「良く思いつきましたね」
Y崎先輩「ん?モテる男は機転が利くもんだぜ」
私「恐れ入りました…」

ガハハと笑おうとして制止された

Y崎先輩「自分が笑われたと勘違いするぜ」
私「ですね…すいません」

着替え終わると二人は車から降りた

ヨーコ「ありがとう、助かった」
Y崎先輩「トイレ行ってこいよ」
ヨーコ「うん」
チエ「行こ」

私「ヨーコさん、沈んじゃいましたねぇ…。ハコスカのサスが硬すぎたのが原因なんじゃないスか?」
Y崎先輩「かもしんねぇな…。」
私「だとしたら責任ありますね?」
Y崎先輩「あぁでもよ、元気が出る秘策ならあるぜ」
私「なんスかそれ?」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

砂浜近くの海岸通りに2台の車を止めるとトランクを開けてバケツを取り出した

私「秘策って花火かー」

大量の花火セットを解くとライターで着火。夜空に舞い上げた。派手な音がコダマする。ヨーコさんに少し笑顔がこぼれた

Y崎先輩「ほら」

線香花火をヨーコさんとチエさんに渡してライターで火を着けた。チラチラと小さな火の玉が飛び交うとヨーコさんの笑顔が戻った

ヨーコ「最初から言ってよ、花火やるならさぁ」
Y崎先輩「サプライズってもんだぜ」
チエ「うわぁー、似合わなーい」

4人でゲラゲラと笑うことが出来た

ローレル組のほうを観ると、ひと際大きな花火が上がった。大きな破裂音とともに歓声があがった。どうやらローレル組も仲良くなれたようだった

 

夜明けが近くなった頃、それぞれ車に戻って座席で少し休んだ

すっかり陽が上がって少し熱くなった頃、滝藤さんがコンコンと窓ガラスを叩いた

 

滝藤「民宿の部屋ひとつ借りれたから、そっちで休もう」

 

8畳間でザコ寝した。みんな疲れ切っていたからあっという間に昼になった

 

民宿のおばちゃん「なんも喰ってねーんだって?にぎりめし作ったから喰ってけ」

 

にぎりめしと味噌汁で生き返ったところで帰宅の途についた。蒲田の西口で解散になった

 

ヨーコ「いろいろありがとう。借りたモノ返すね、京急川崎のガード下のレストランね?覚えたから」

私「お疲れ様でした」

Y崎先輩「おー、またな」

チエ「じゃ、またいつかねー」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

それから暫くたったある日、レストランでバイトしているとドアの鐘がガランと鳴った。ヨーコさんだった

私たちを見ると彼女はニコッと笑った

Y崎先輩「お好きな席にどうぞ」
ヨーコ「じゃ、ココにする」

そこは私たちホール係が常駐して待つ、サイドテーブルのまん前の席だ

Y崎先輩「ご注文は?」
ヨーコ「ホットミルクティーで」
Y崎先輩「かしこまりました」

ホットミルクティーやコーヒーはホール係が淹れる担当だ。ここは当然、Y崎先輩が淹れた。ヨーコさんはずっと視線でその様子を追っていた

Y崎先輩「お待ちどおさま」
ヨーコ「…うん、美味しいよ」

ティーカップを置くと彼女はトートバッグを取り出した

ヨーコ「このあいだのトートバッグ返すね」
Y崎先輩「あぁ、捨てていいのに」
ヨーコ「でも、ジーンズはさ、ちょっと汚れたから返せないからさ」
Y崎先輩「それも捨てていんだぜ」
ヨーコ「悪いよ、1万円払うよ、今日はそれで来た」

彼女はテーブルに封筒を置いた

Y崎先輩「そんなもん要らねーぜ」
ヨーコ「気持ちだよ、受け取ってよ」
Y崎先輩「断る」

押し問答が暫く続いた。私は割り込んで言った

私「ヨーコさん、こうなると受け取らないですよ、先輩。その代わりデートしてあげてくださいよ、それで終わりにしましょう」

2人が私を凝視した。私は2人があっている気がしていたので畳み込んだ

私「ダメですか?ヨーコさん」
ヨーコ「それで気が済むなら別にいいけど…」
私「いいスか?先輩」
Y崎先輩「お前よぉー、でもまぁ、そっちがいいならいいぜ…」
私「はい決まりーっ!連絡先交換ターイム!」

2人は連絡先を交換した。すると彼女がおもむろにこう言った

ヨーコ「でもさ、あの車で行くんだったらさ、安全日に出かけないとねっ!」

私とY崎先輩はふっと笑った。彼女もニコッと笑った。私は思った。自分の恥ずかしい思い出をこんな風に笑いに変えるヨーコさんって素敵だなと。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

マネージャー「俺もうすぐ出かけるから、お前ら先に飯くっちゃえよ」

 

バイトのまかないはカレーライスとか、ハンバーグと目玉焼きとか簡単なものだったが、コックの腕はなかなかで素晴らしく美味しかったことを覚えている

Y崎先輩「もしかしてよ、お前ナンパの才能あるんじゃねーか?伝説のナンパ師になれんじゃねー?滝藤も言ってたぜ、初回からヒットするのはなかなかないってよ」
私「いやーたまたまですよー、そんなお世辞言っても、もう二度とやらないっスよ」
Y崎先輩「なんだよー、惜しいぜ。お前なら入れ食いだぜ」

私「いや、いいとこ躍り食いっスよ。…ところで先輩、ヨーコさん、もうそういう仲っスか?」

Y崎先輩「訊くなよー、まだだぜ。」

私「いやーホントっスか~?」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ある日の土曜日。私は中学の時、テニス部でペアを組んでいたN坂を誘って蒲田駅西口にいた。たまたまですよと言ってはみたものの、少しその気になった私はナンパを始めた。

N坂「ホントかよー、ひっかかるのかー」
私「このあいだは上手くいったんだよ」

声を掛けること10数組、綺麗めなお姉さんが向こうから2人来た

私「あ、すいません、一緒に飲みませんか?」

顔を見合わせる2人のOL風お姉さん。見ると5つ6つ年上に思えた

美人さんA「そうねぇー、付き合っちゃおうかなぁー」
美人さんB「こっちも飲み屋さんに行くとこだから、じゃ一緒するぅー?」

よしっ!やっぱり才能あるじゃん、オレ。N坂がきょとんとしている

美人さんA「じゃさ、行こうと思ってた店でいい?」
私「えぇ、いいですよ」

西口の商店街をだいぶ進むとその店はあった。ただの居酒屋だとばかり思っていた私は少し面食らった。スナックだったからだ

 

【イメージ画像】スナックのカウンターで働く二人の女性

私たちが店に入るとカウンターに彼女たちが入って行った

私「えっ?」

美人さんA「いらっしゃーい!何にする?ボク」

 

私とN坂「コーラお願いします!」

 

--この後どうなったか --
実はこのあとはコーラで終わるはずもなく、結構飲まされるハメになった。ひとり3千円づつくらいかな、払って帰宅したが、働くようになってそのスナックに行ってみると、あれ相当安くしてくれてたんだと。学生料金だったね。お姉さんたちも相当飲んでたから本当はこっちがその分持つわけだけど、たぶん付けてなかったね、学生だからと。でも、そのときの姉さんたちとの会話も下ネタばっかでおもしろかったんだよなー。ま、またいつかその件も書こうかな。
 

(…次回『(第16話)万引き指南?姉のビンタにすすり泣き』に続く)

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