高1の秋、私は水川に二子玉川の子を紹介してもらうことになった
※水川(『約束シカト?中1初恋5万円』参照)
私たちは品川駅にあるアンナミラーズで待ち合わせた。女性店員は高校生だろうか、可愛いい制服のミニスカートがまばゆい
ガランとドアが鳴ると水川と二子玉に住む彼女は現れた。
(※彼女の事は仮に二子女と呼ぶことにする)
注文をすますと水川が『どうだ?』と目で合図した
二子女はおとなしそうな可愛い子だったので、私は即座にOKサインを出した。だが、相手にはされないだろうと思った。(そもそも選べる立場でもない)
最初は水川と会話をしていたが、次第に二子女も会話に加わるようになると、私は会話が盛り上がるように頑張って話題を提供し続けた
今でいうアイスブレイクもそつなくこなし、盛り上がった会話もいくつかあったが、それでも上手くはいかないと感じていた
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水川「いいってさ」
私「えぇ?マジで?」
次の日、水川が電話で知らせてきた
かくして人生で初めて彼女ができた
昔見た『われら青春』のように走り出したい気持ちになった
東急線の大岡山駅で初待ち合わせ。二人っきりで会うのは緊張するな
二子女「遅くなっちゃった…」
テレながら笑いかけてくる彼女が可愛い
私「俺も今来たとこ。とりあえずお茶でも飲む?」
近くの喫茶店に入って何も知らないお互いのことを埋め合った。普段している好きなこと、好きな音楽、どんな雑誌読むの?今度行きたいとこある?…など、変な間があかないように用意してきた話題をぶつけた
二子女「そうだなー、横浜行かない?ほら、ユーミンの歌詞に出てくる『ドルフィン』とか行ってみたいかも?」
私「いいね、行ってみたい!そこにしよっ」
やっぱり彼女はソーダ水を頼むのかな?なんて思っていた…
手をつないで坂をあがるとドルフィンはあった
二子女「あーっあったー」
私「ここかぁー」
席に着くとウェイターが注文を促す
二子女「うん、ソーダ水で!」
私「やっぱりそうなるよね、同じで」
ソーダ水に貨物船映るかな?…なんて遠く貨物船を探す彼女を見て、私は恋に落ちた
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ある日、いつもの大岡山駅の喫茶店を早めに切り上げて、二子玉川に行こうという。高島屋の屋上から見る景色が好きだという
私「うん、俺も見てみたい」
秋も深まった高島屋の屋上は寒かった。高い建物もなく遠くまで見渡せる景色は素晴らしい
私「あの川ってさ、多摩川?」
二子女「うん、そう」
彼女はベンチに腰掛けた
二子女「結構寒くなってきたね」
私は隣に座ると彼女の手を握って暖めた
二子女「手、あったかいんだね」
私はおもむろに左手で彼女の肩を抱き寄せてキスをした。彼女はすんなり受け入れてくれた。初めてだった
私「…急にゴメン」
彼女はとびきりの笑顔で応えた
二子女「ぜんぜん!」
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姉「愛しい人から電話だっよーーーん!」
私「うるせぇよ、バカ」
電話に出た
私「もしもし、俺、どした?」
二子女「うん、あのさ大晦日、うちこない?」
私「え?いいの?一家団欒の日じゃん」
二子女「うん、親は旅行に行ってて大晦日遅く帰ってくるの。お姉ちゃんはいるけどさ」
私「お姉さんはいるんだ。本当にいいの?」
二子女「いいじゃん、来てよ」
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大晦日、お昼過ぎ二子玉に着くと彼女は待っていた。川沿いの道をしばらく歩くと彼女の家に着いた。
私「おっとー、スゲー家じゃん、立派ー」
二子女「そんなことないって」
彼女の父は建設会社を経営している社長さんだった。家が立派なのも頷けた
これまた立派な玄関に入るとお姉さんが迎えてくれた
二子女姉「はじめまして。良く来てくれたね!」
私「あ、初めまして。大晦日にお邪魔してすいません」
二子女姉「やだー、堅い挨拶は抜きッ!よろしくね!」
なんと、彼女の姉はひとつ飛び抜けた美貌の持ち主だった
美人姉妹っているんだーと思った
リビングに入ると豪華なおせち料理が『これでもかッ!』というくらい並んでいた。我が家の雑煮や簡単なおせち料理とは比較にならない。料理はどれも美味しかった
彼女の実家は紛れもなくブルジョア階級だった
「ブルジョワ」とは、主に資本家階級や中産階級を指す言葉である。 もともとはフランス語の「bourgeois」から来ており、商工業者や金融業者など、財産を持ち、経済的な地位が高い人々を指す。 また、ブルジョワは一般的には、貴族階級ではないが、社会的地位や経済力を持っている人々を指すことが多い。反対語に「プロレタリア」があり「労働者階級」がある。もちろん我が家はこっちだ。どちらも今ではほとんど聞かれない単語だが当時はメジャーな表現だった
3人で他愛もないトランプに興じていたら、二子女姉が奥からビールとグラスを2つ持ってきた
二子女姉「イケるクチと聞いたぞ!はい、どうぞ…」
私「えっ、あー、じゃいただきます」
高校の友人と居酒屋に飲みに行ったりはしていたから、酒はいけるクチだった
当時は未成年の喫煙や飲酒は規制が緩くて、酒屋や居酒屋への出入りも高校生くらいならうるさく言われることはほとんどなかった
ゆっくり飲みながらトランプやボードゲームをしていたら、あっという間に夕方になった。結構酔ってきたし、そろそろ失礼しないと親御さんが帰ってくるよな?って思ったときだった
二子女姉「あっ、そうそう、今日お母さん達帰ってこないから」
私「はぁ」
二子女「泊まっていきなよ!」
私「えっ!!」
二子女姉「そうだよ、もう夕方なんだしさ、泊まりならもっと飲めるでしょ。『Jack Daniels』開けるから味見しない?バーボン!」
いや、さすがに彼女の家に泊まって元日を迎えるのはどうなんだろうと一瞬思った。だが、すでに酔いも回っていたこと、姉妹揃って泊まって行けと強く誘われたことから同意した
しかし、この宿泊はのちに激しく後悔することになる
紅白が終わってTVから除夜の鐘が鳴り響いた。彼女と紅白がどうだこうだ、レコード大賞はつまんないよね、などと喋っていたら二子女姉がそろそろ寝ようというと、向こうの部屋を指してこう言った
二子女姉「二人はあっちで仲良く、どうぞ…」
くすくすッと笑ったかと思うとあっという間に2階に消えた
二子女「歯磨くでしょ?歯ブラシ用意するね」
えっーー?アリなのーー?否定しないのーー?
歯を磨きながら思った。ヤベーぞ、ゴムねーぞ。駅前に買いに行くか、でもなー売ってる場所もわからねー、蒲田と違ってゴムの自販機みかけたことねーしなー
そんなことよりもっと基本的なことがあった
つーかそもそも…使ったこともねーわ
いや、ゴム自体は見たことも触ったこともある。高校の教室に持ち込んで輪ゴムのように飛ばしているバカを何回も見かけていたからだ。少なからず私も飛ばしかえしたこともあった。だが、自分で買って着けてみたことまではない。そういう状況になることはまだ予想の範囲外だったからだ
まずいぞまずい。どうしようか…。
二子女「布団ひいた。これ大きいかもだけどお父さんのスウェットでいい?」
私「何から何までごめんね、ありがと」
お父さんのスウェット?
私は妄想した。もしも、明日朝早く両親が帰宅でもしたら…
二子女の父(想像)「なーにワシの寝間着きとるんじゃー」
ブルブルッ!いや、どこの田舎モン親父だよ、そんな口調はないだろ
だけど朝一帰んないとな
二子女「寝るの?寝ないの?」
私「寝る寝る」
部屋に入ると布団は二つ用意されていた。なぜか、少しホッとした。明かりを消して布団に入ると彼女と眼があった。可愛かった。思い切って彼女の布団に入ってキスをした。ブラに手をかけたそのとき、最悪なことばかり想像させる悪魔が囁いた…
待て待て。これでもしも子供が出来たらどうする?…私は想像してみた
ご懐妊想像パターン1
母「人様のお嬢さん傷つけて何してくれてんの!死んでしまえ」
姉の右ストレートが飛んでくる…
あるな、これはそうなるわ…
ご懐妊想像パターン2
二子女の父(想像)「なーにワシの娘孕ましとんじゃー、殺すぞー」
二子女の母(想像)「あー、どうしましょー、娘の将来が台無しよー」
もちろんあるな、これもありうるわ…
悪魔は同じ事を何度も考えさせた。私はこの先に進む勇気を削がれてしまった。しぼんでしまったのだ。酒を飲み過ぎたせいもあった。強烈な睡魔に襲われて、そのまま眠り込んでしまった
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元日朝、起きるとそそくさと帰り支度して新年のご挨拶をした
せっかくなんだからお雑煮でも食べて行きなよと言う彼女の姉を振り切って、私は駅に向かって彼女と歩いた
沈黙が続いて駅に着くと改札口で『またね』と手を振った。彼女も手を振って笑っていた
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あれから電話してもなかなか彼女はでなかった。不在が続いた。しばらく電話するのをやめた後、彼女の誕生日が近づいたある日、思い切って電話してみた
二子女「はい」
私「あ、俺だけどもうすぐ誕生日じゃん、お祝いしようよ」
二子女「うーん」
私「土曜日午後どう?」
二子女「じゃ、高島屋の屋上で待ってる」
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高島屋の屋上で久しぶりに会う彼女は笑顔がなかった。私は精一杯の誕生日プレゼントを渡した
二子女「ありがとう。あのさぁ…あのね…」
私「うん」
二子女「もう、終わりにしよっ…わかれよ」
私「え?何で…理由訊いていい?」
二子女「うーん。…好きな人が別にできたから…」
理由は嘘だと思った。あれからまだ2週間と少ししか経ってない。そんな急にありえない。違うよね?あの夜のことだよね?…でも言えなかった
私「いろいろゴメン、嫌な思いさせちゃったことがあれば謝るよ、だけど別れんの待って欲しい」
二子女「別に謝ることないよ、好きなヒトできちゃってこっちこそゴメン…」
そう言われちゃうとな…。もう戻れないんだなと悟った。私は悪あがきを止めた
私「そっか、好きな人できたんじゃ、しょうがないな。こっからの景色も見納めかぁ…」
二子女「…」
私「元気でな。じゃな…」
二子女「うん」
私は見送らないでいいと言った。泣きそうだったからだ
電車に乗ると二人で行ったドルフィンが浮かんできた。ソーダ水なんか頼んで貨物船なんてぜんぜん通らないじゃないか、ユーミンの嘘つきめ…
私は俯いてしたたる涙を隠した。鞄に落ちた涙が糸を曳いて流れた。袖をなすりつけてそれを拭いた。拭いても拭いてもまた糸を曳いた。キリがないなと思ったとき、もう拭くのを止めた
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それから2ヶ月後、高校二年の春ころだったか、中学時代の同級生と酒を飲んだ
(※若いときのベンガルに似ているから仮にベンガルと呼ぶことにする)
ベンガルはビールをどんと置くとまくし立てた
ベンガル「そりゃーお前やっちまわねーからそうなるんだよ」
私「けどよ、状況的にムリだっつーの」
ベンガル「バカ。とりあえず先っぽだけ挿れときゃよかったんだよ、それで彼女のメンツもたっただろーが!」
私「そっかー、その手かー」
あの状況ではとても思いつかない発想だった
ベンガル「だろー?だいたいよ、わざわざ親がいないときに泊めてくれてだよ、姉さんが気を利かしてくれてお膳立てまでしてくれたんだから、それ喰わないとー!お前が悪いぞ」
私「だよなー、俺が悪いよなー」
ベンガルは『よし』と言ってテーブルを叩いた
ベンガル「俺がそのうち紹介してやるよ、可愛い子、そのうちな」
私「マジかー、よろしく頼むよ」
ベンガル「その代わりよ、そん時はちゃんと喰えよな?約束な!」
私「わかった、わかったよ、喰う喰う言うなよ」
周りの客がなんの話だって顔でみてる
ベンガルに相談してみて良かった。なんか心が晴れ晴れとしてきた。失恋のキズも癒えそうだ
その後ベンガルは本当に可愛い子を紹介してくれることになる。その話も長くなるので次回のブログで述べたい
(『ホントの初体験?渋谷のラブホは坂の上』…に続く)
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